ギターの音でシンセを鳴らす、いわゆるギターシンセ。iOSアプリにもいろいろ出てますが、今度のは和音もOK(ポリフォニックですよ!)。名前もド直球な「MIDI Guitar」です。
「MIDI Guitar」は入力されたギターの音をMIDIに変換。内蔵のシンセで鳴らしてくれます。しかも単音だけでなく、和音もOK。コードストロークなんかもちゃんと鳴るんですよ、これが。
画面はいたってシンプル。INPUT LEVELのインジケーターとか、認識したノートを表示する下部のエリア(オクターブ違いは表示だけではわかりません)がメインでしょうか。
Line 6 Mobile Inでギターを入力すると、ちゃんと和音も拾って、ピアノの音で鳴るんです。メロディを弾いても、コードを弾いてもしっかり検出。遅れもさほど気にならない感じです。うまい人には、なんじゃこりゃ!ってなりそうですけども(後述)。
で、このアプリ。無料となっています。無料だと内蔵のピアノ音源が鳴るだけですが、アプリ内課金で機能が大幅に増えます(機能制限が解除されるってわけですね)。現在、イントロ価格で450円! で、これで機能制限が解除されると、以下の機能が増えます。
- Virtula MIDIでほかのシンセアプリが鳴らせる
- WIFI MIDIでPCのDAWのソフトシンセが鳴らせる
まず、Virtula MIDI。今回はiPadのSUNRIZERでテスト。SUNRIZERを起動して、でバックグラウンドをON(画面左上)。MIDI Guitar側ではOUTPUT ROUTEに「SUNRIZER MIDI IN」が出てくるのでそれを選択するだけ。これでギターの音を検出してSUNRIZERが鳴ってくれます。MIDI Guitarがバックグラウンドになっても有効(特に設定なし)なので、SUNRIZERで音を作りながら、ギターで演奏できます。カンタン!
次。WIFI MIDI(この用語も似たような表現がいろいろあってどれが正しいのかわかりませんが、)。MIDI Guitar側ではOUTPUT ROUTEを「ほにゃららSESSION 1」に(前半は文字化けしてわかんないですが、それっぽいやつ)。Windows側でrtpMIDIを起動。DAW側でそれを入力として選択。rtpMIDIを使ったことがあれば迷うところはなしなはず。これでDAWのソフトシンセも演奏できます。もちろん、MIDIのレコーディングもOKです。
このへんは、以前ThumbJamでやったのと同じ感じです。詳しくは以下を参照。
ギターや声でシンセ鳴らすならThumbJamだよ! 意外と知られてないpitch to MIDI
レイテンシーはどれくらい?
でも、この手のテストで気になるのが、発音の遅れ。いわゆるレイテンシーです。
本体内蔵のピアノ、Virtual MIDIによるiPad内でのルーティングの2つは、なんとか演奏できるかな、という範囲。でも、WIFI MIDIはかなり遅れます。一呼吸またされる感じ。まったくもって厳しいです。リアルタイム演奏にははっきり言って向きません。ストリングスみたいな音で空間をうっすらうめるなんて使いかたならごまかせるかもですが、やっぱり厳しい感じ。
では、どれくらい遅れるのか? ひととおり検証してみました。検証方法が厳密・正確とはいえないので、まあ、ネタと思って流してください。
検証は、PCのDAWを使用(SONAR 8.5)。ギターの生音をマイクで収録。同時に、iPad側の出力(内蔵ピアノ音源またはVirtual MIDIによるSUNRIZER)を録音。またはWIFI MIDでIrtpMIDI経由で受信したノートをレコーディング。それぞれのタイミングをレコーディングされたデータで測ります。MIDIノートはタイミングがはっきりしてるのでいいのですが、オーディオの波形はどこを見るかでだいぶ結果が変わってきます。実際のところ、和音OKとなると、どの時点で検出が開始されるのかわからないのです。今回はコードのカッティングでやってみました。下手くそではありますが、なるべく短い音でやるよう心がけました。
今回はマイクで収録したギターの音はピークの時点(減衰が始まるところ)を基準に。iPadの音は発音が始まるタイミングとしました。
●内蔵音源
まずは、内蔵のピアノ音源。
波形の上がギターの音、下がiPadのピアノの音です。遅れは70msといったところでしょうか。
●Virtula MIDI
続いて、Virtual MIDIによるSUNRIZERの音。iPad内部でのルーティングがあるので、さらに遅れるのでは? という予想があったのですが。
結果はほぼ変わりません。内蔵ピアノ音源より10msくらい遅いかな? という感じもありますが、適当なテストなので、確実なことは言えません。弾いてる感触でも違いはわかりません。ちなみに、最初の画面と縮尺は同じです(以下も同様)。
●WIFI MIDI
最後は無線LAN経由でのDAWのコントロール。というか、MIDIでのレコーディング。
画面の上が、MIDI Guitarが検出して無線LAN 経由で送ってきたMIDIデータ。下がギターのオーディオ録音。
かなり遅れてます。200msは遅れてるはず。うーん。やっぱり同期しての演奏は難しいです。
ただ、レコーディング後に遅れを修正するとかならなんとかなるかもしれません(前につっこませる=移動)。音を聞きながらはかなり違和感はあるのですが、聞かないでやるってのもひとつの手かと(んなわけないか)。
ノートの検出精度は?
レイテンシー比べると、こちらは意外と検討してます。あまり速いと追いつかない感じはあるのですが(音が切れたのを検出できず、つながってしまったりとか)、ほんとにポリフォニックで検出してる!っていう驚きは味わえます。
MIDIノートを見ると、「なんでこんな音がこんなタイミングで?」なんて思うことも多いんですが、それは私のギターの下手くそさゆえかもしれないので。
まあ、このへんは、無料バージョンのままでも試せる(ピアノのみだけど)ので、そのへんは実際に使ってご自身で判断してください。
イントロプライスがいつまでかはわからないのですが、ギターで遊びたいという人にはとっても魅力的なアプリなので、今のうちにチェックしておいたほうがいいと思いますよ。
Jam Origin
ジャンル: ミュージック – エンターテインメント
リリース日: 2012-07-03
価格: 0円
posted with sticky on 2012.7.13
そういえば、以前DTMステーションで紹介されてた「Audio MIDI Connect」と比較すると、和音OKってところだけでもアドバンテージがあるかと。
ギターや声でシンセが弾ける、Audio MIDI Connect – 藤本健の“DTMステーション”
この記事を読んだときには、「Audio MIDI ConnectなんかよりThumbJamのほうがいいじゃん!」(内容は最初のほうにあるリンクから)ということで、テストすることもなかったのですが、藤本さんならどうジャッジしますかね? なんてことを思ったりしてます。
公式ビデオとか補足とか
最後に、メーカーによる動画を。これで、その実力をチェックしちゃってください。
うーん。これ見ると意外とレイテンシーが低い! 今回の検証方法に間違いがあったのでは? と思えてきました。まあ、そのへん、正しい検証はどなたかがやっていただけるでしょう。私のこの記事は参考にしないようお願いします。というひどいオチ。
そういえば、同じくギターシンセとして一時期話題になったSHREDDERはどう対応してきますかね。値段はSHREDDERのほうが高かったわけですが……(イントロプライスと比較しちゃだめか)。
最後にちょっと思ったことを補足。 無線LANで飛ばして、ってところにレイテンシーの原因がありそうですが、無線LANの機器側と、仮想MIDIドライバとして動作するrtpMIDIに問題があるかも、とか思えてきました。Macならそのへんがもう少しうまくできてるのかも(上の公式ビデオはMac)。CoreMIDI over Wi-FiはMacOS X内蔵の機能ですからね。
あと、注意が必要なのは、バッテリーの消耗が非常に早くなる点。Mobile Inそのものがバッテリー食いなのと、さらに無線LANですからね。こういうときはヘッドフォンジャックを使ったやつのほうがいいかも(ノイズの問題がありますが)。
さらに補足しておくと、ギターだけでなく、iPadの内蔵マイクからのオーディオからの検出もOKです。シングtoスコアも大丈夫ってとこですね。
ギタリスト以外の方も一度お試しを!
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