エレフエとWindows 10のBluetooth MIDI接続に成功した

音楽制作

 TAHORNGの「エレフエ」とWindows 10のワイヤレス接続について、「不可能」と結論づけたのが昨年の6月(Elefue(エレフエ)とWindows Bluetooth MIDI)。それから約半年。接続に成功した。

 本記事ではこの接続手順の詳細を紹介する。理解するにはちょっとした予備知識が必要になるが、まずはそのへんをすっとばして手順を示すことにする。

 ちなみにこのエレフエ。海外では、「Carry-on Digital Wind Instrument」という商品名らしい。仕様の相違はわからないが、この海外版でも同じ手順でWindowsのワイヤレスMIDI環境ができるかもしれない。

エレフエをWindowsで使うための手順

 まずはアプリを3つ用意する。

MIDIberry
loopMIDI
Bluetooth LE Explorer

 エレフエ以外のBluetooth MIDI対応楽器では、MIDIberryとloopMIDIだけでDAWへのMIDI信号を送ることができる。しかし、なぜかエレフエの場合はMIDIberryにMIDI信号が届かない。

 そこで使用するのがBluetooth LE Explorerだ。

 動画にはないが、まずエレフエ本体の操作で電源をON。電源ボタンの下のBluetoothボタンを押すと、青く点滅するはず。この状態でWindowsでペアリングの操作をする。ペアリングの操作はOSの設定を使うのが基本だが、動画のようにBluetooth LE Eplorerでやってもよい。なお、Windows 11では最近のアップデートでBluetoothデバイスの列挙の際にMIDIデバイスが出てこないという事象が発生しているが、Xのこのポストが参考になる。

 ペアリングが完了した時点でMIDIberryを起動すると、「入力」欄に「Elefue (Bluetooth MIDI IN)」(以下エレフエ)、「出力」欄に「Microsoft GS Wavetable Synth」(以下GSシンセ)と「Elefue (Bluetooth MIDI OUT)」が出てくるはず。

 ここで入力にエレフエ、出力にGSシンセを指定する。普通のBluetooth MIDIデバイスならこれで準備OK、GSシンセで音が鳴らせるのだが、エレフエ本体を吹いても信号はこない。そこで次の操作。

 DAWへの出力のためには仮想MIDIポートが必要になるので、まずは作っておく。下の「+」ボタンでポートを新規作成。動画ではデバイス名はデフォルトのまま進めているが、「MIDI-IN」とかにしたほうがわかりやすい。

 3つめのBluetooth LE Explorerでの操作は、Startボタンを押して、ペアリングが済んでリストアップされた「Elefue」の枠内で「Name」の上の黒い四角を押してスタート(ペアリングが済んでなければ、下の「Pair」から)。

 ページが「Device Services Page」に移動し、エレフエがサポートするBluetooth LEの各種サービス名が列挙されるので(意味はわからなくて大丈夫)、見出しの「Service Name」が「03B80000-EDE8-4B33-A751-6CE34EC4C700」となっているところ(最後がc700のやつ)を探し、そのすぐ下のCharacteristic Nameのあたり(上の画面で濃い灰色のあたり。マウスポインタを持っていくと画面のように色が変わるが、最初は白地)をクリックする。

 「Characteristics Page」という次のページが開くので、下の方にある「Notify」というスイッチをONにする(スイッチっぽいやつを左にドラッグするのではなく、クリックするだけでよい)。ここでエレフエを吹くと、MIDIberryの「入力モニター」欄にMIDI信号が表示されるはずだ。

 ここで、音が出ない、モニターに出てこないという場合は、再度MIDIberryの入力に注目。2つのデバイスがリストアップされているはずなので、いったんエレフエじゃないやつ(先の例だとloopMIDI Port[1])を選んでから、もう一度エレフエを選ぶという操作をする。これで接続がリセットされる。出力のGSシンセはたぶんそのままでいいと思う。

 GSシンセが鳴ったら、それはたぶんピアノ音色のはず。音色を変えるには左上のハンバーガーメニュー(「三」みたいなやつ)を開くと、GM音色リストから128の楽器から音色が選べる。木管・金管楽器はもちろん、ストリングスなんかも楽しい。

 GSシンセを鳴らすのに飽きたら、今度は出力を仮想MIDIポートにして、DAWを起動。DAWの入力に仮想MIDIポートを指定すればよい。

 MIDIberryは、エレフエからの演奏情報を仮想MIDIポートに出力、その信号がDAWに届く(MIDIberryは「ブリッジとして動作する」とか「MIDI信号をルーティングする」とか海外では言われている)。流れはこんな感じだ。

 エレフエ → Windows → MIDIberry → loopMIDIで作成した仮想MIDIポート → DAW

 なぜBluetooth LE ExplorerでNotifyをONにすればいいのか? 実のところまったくわからない。中国でBluetooth LEデバイスを自作している人がうまく動作しないという相談をしていたフォーラム(もちろん中国語)の記事で、このソフトの存在を知り、いろんな設定を試してたらうまくいった。それが今回の発見にいたった経緯だ。

 Bluetooth LE関連のソフトやハードを開発しているみなさん。なにか情報があればいただけると幸いです。よろしくお願いします。

その他予備知識とか経緯とか

 Windows 10でBluetooth MIDI対応楽器を使うのは、MacやiOSなどと違って、かなり面倒だ。OSの対応に不備があり、従来のMIDI対応アプリからは使用できず、ブリッジアプリと呼ばれるユーティリティソフトが必要になる。簡単ではあるが、これまでの経緯を以下に記す。

 2016年のWindows 10 Creators Updateでサポートされたものの、アプリケーションがUWPまたはWinRTと呼ばれる新しいAPIを使用しないといけないというものだった。マイクロソフトの対応がいまいちだったせいか一般的なDAW製品では対応が遅れに遅れた。現在メジャーな商品ではCubaseが昨年やっと対応したくらい(2017年春に最初に対応したCakewalk SONARは身売りされ、進化が止まってしまった)。

 既存のソフトウェアがUWP/WinRTに対応してくれないとBluetooth MIDI対応楽器は使えない。そこで作られたブリッジソフトが拙作の「MIDIberry」だ。BluetoothでペアリングしたMIDIデバイスを認識する。これはマイクロソフト・ストアで無料で入手できる。

 MIDIberryはマイクロソフト製のソフトシンセ「Microsoft GS Wavetable Synth」を鳴らす機能があるので、Bluetooth MIDI楽器を認識できればすぐにさまざまな楽器音を鳴らすことができる。とはいえクオリティは市販のVSTインストゥルメントはもちろん、DAW付属のソフトウェア音源とは比べるまでもない。

 MIDIberryとDAWソフトをつなぐために使用されるのが、仮想MIDIポートを作成するソフトウェア。ドイツのデベロッパー、Tobias Erichsenによる「loopMIDI」が有名だ。MIDIberryは、このloopMIDIと組み合わせて使うことを想定して開発されている。

 loopMIDIで作成した仮想MIDIポートは、物理的なMIDIデバイスと同じように各種Windowsソフトウェアから認識され、ほぼすべてのDAWから使用可能だ。接続のイメージは以下のような感じだ。

 Bluetooth MIDI対応楽器 → Windows → MIDIberry → loopMIDIで作成した仮想MIDIポート → DAW

 エレフエのようなBluetooth MIDI楽器は、Windowsでは「MIDI入力デバイス」として動作する。「MIDI」は、演奏情報をやりとりするための規格で、MIDI対応楽器、MIDIデバイスはMIDIによる演奏情報を入出力する。エレフエはMIDI信号をBluetooth経由で出力するのだが、OSや一部のDAW(UWP/WinRT対応)にとっては入力デバイスになる。

 いや。「なるはず」、なのだが、なぜかMIDIberryまでMIDI信号が届かない。それがつい最近までのことだ。Quicco Soundのmi.1シリーズやCMEのWIDIシリーズ、YAMAHAのMD-BT01といったBluetooth MIDIアダプタ、ヤマハのキーボードSHS-300などは、WindowsでBluetoothのペアリング後、MIDIberryで「入力」に指定すれば、MIDI信号が流れてくるのがすぐわかる。

 しかし、「エレフエ」は違う。MIDIデバイスとして認識されるのだが、演奏しても(吹いても)MIDI信号が流れてこないのだ。だから、昨年時点では「WindowsのOSからは使えない」と結論。「WindowsではCMEのBluetooth MIDIアダプタ『WIDI Uhost』や『WIDI Bud Pro』と組み合わせて使おう」と記事にしたのだった。

 でもって、その後いろいろあって今回の発見に至った次第。なんかまとめられなくなったので、とりあえずここで終わり。今年はWindowsのMIDIまわりが大幅に変わるらしいので、こうした心配もいらなくなるかもしれない。エレフエへの対応のためにMIDIberryの改変(新機能追加?)も考えたけど、どうせWindowsの仕様変更で無駄になりそうなので、考えるのはやめることにした。

 あとは、なんか思い出したり思いついたりしたら追加します。では、楽しいエレフエ・ライフを!

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